• 社会

カラー写真化で解凍された原爆投下前の「幸せな記憶」

幸せな日常から戦争の記憶を伝える

凍りついていた家族との悲しい記憶が、カラー化写真をもとに対話することで、戦前の幸せな日常へと変わっていく様子から「記憶の解凍」と名づけました。


今生きている多くの人々が、戦争を体験していない世代です。しかし白黒写真に「記憶の色」を載せることによって、戦争を体験していない人も、かつてあった平和な日常に想像をめぐらせることができると感じています。


私は被爆直後の惨状などの写真をカラー化したいとは思っていません。戦争体験者は、悲惨なことが起きる前に撮影された日常の写真をとても大切にされています。思い起こしたくないつらい記憶を無理やり掘り返す記憶の継承の仕方ではなく、ご本人が伝えたい幸せな記憶を伝える。そのことによって「こんなに幸せな日常が突然破壊されたのだ」という戦争の恐ろしさを伝えることができると思っています。

心の内側から「記憶の解凍」を

2020年、共著者の渡邉先生と私がこれまでカラー化に取り組んできた約350枚の写真を『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』という一冊の本にまとめました。


この本をきっかけに、広島出身のシンガーソングライターであるHIPPYさんや、作曲家でピアニストのはらかなこさんとの出会いが生まれ、私が初めて作詞・コーラスに挑戦した「Color of Memory ~記憶の色~」という楽曲ができあがりました。楽曲のミュージックビデオは、映像作家の達富航平さんと制作し、濵井さんも登場します。さまざまな感性に響かせて、皆さんに心の内側から「記憶の解凍」を感じてもらいたいという想いから、取り組みました。


また、スマートフォンを利用した「記憶の解凍」AR(拡張現実)アプリも作りました。無料でダウンロードできるアプリを平和記念公園の中で開くと、当時の風景を白黒写真とカラー化写真の両方で見ることができます。平和記念公園を訪れて現地を歩きながら「被爆前のこの場所にはこんな日常があったんだな。こんな街並みがあったんだな」と体感できるアプリです。


座学で白黒写真とカラー化写真を見比べるのと、原爆が落とされた場所で実際に足を動かすのとでは、実感の仕方がまったく違ってきます。感性と体感で学び取る。このような体験に「記憶の解凍」ARアプリは役に立つと考えています。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4

この記事をシェアしませんか?

1か月から利用できる

雑誌の定期購読

毎号ご自宅に雑誌が届く、
便利な定期購読を
ご利用いただけます。