• 社会

【先行配信】「熊本地震」と「南海トラフ地震」はどう関連するか

7月28日に熊本県熊本地方を震源とした大地震が発生し、熊本市南部から八代市北部を震度7~6強相当の揺れが襲った。同県では10年前にも大地震が発生している(平成28年熊本地震)。地面の下では一体何が起きているのか。「南海トラフ巨大地震」との関連はないのか。長年にわたり「南海トラフ」について警鐘を鳴らしてきた地球科学者・鎌田浩毅氏が解説する。

  • 鎌田浩毅氏

熊本地震の発生メカニズム

7月28日に熊本県熊本地方でマグニチュード(以下Mと略記)7.1の大地震が発生し、最大震度7を観測した。熊本市南部から八代やつしろ市北部にかけて約1万人が震度7相当、約22万人が震度6強相当の揺れに襲われたのである。さらに北陸地方から九州地方の広い範囲にかけて震度6強〜1の揺れを観測した。 死者は38人(8月21日現在)で、広範囲で電気・水道・ガスのライフラインが止まり、九州新幹線ほか鉄道と航空路が全面運休した。亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 この地域では2016年に最大震度7を観測した「平成28年熊本地震」が起きていたため、気象庁は今回の地震に対して「令和8年熊本地震」と命名した。本稿では、なぜこのような地震が起きたのか、今後どのような予測ができるかについて、私が専門とする地球科学の最新研究成果に基づいてポイントをわかりやすく解説したい。 熊本地方は前回からわずか10年ほどで震度7という激震に襲われたが、その原因は地下に潜む活断層が動いたためである。2016年には4月14日にM6.5の地震による震度7を観測した28時間後の4月16日、M7.3の地震による震度7の揺れが再び襲うという稀な現象が起きた。 通常は最初に最大の揺れをもたらす本震が発生し、その後は小さな余震が続くものだが、後から規模の大きな地震が起きたのである。この結果、死者275人(直接死50人、関連死225人)で重軽傷者2739人にのぼり、避難者は最大18万人を超えるという大災害となった。 このときの震源は、熊本県中央部を走る日奈久ひなぐ断層帯と布田川ふたがわ断層帯という2つの活断層の北部にある(図1)。一方、今回の地震の震源は前回から南西方向に20キロメートルほど離れた日奈久断層帯の北東部である。

  • 図1

日奈久断層帯は、熊本県益城ましきちょうから八代海にかけての山際やまぎわを北東―南西方向に延び、全体の長さは約81キロメートルである。さらに3区間に区分され、「高野―白旗しらはた区間」「日奈久区間」「八代海区間」がある(図1)。このうち前回は高野―白旗区間が動き、今回は10年前に動かなかった区間が動いた。今回も余震が非常に多く続いているが、それらは日奈久区間で起きている。

第一級の「Sランク」活断層

今回の震源の深さは16キロメートルで、震源断層が約30キロメートルにわたって活動した。地下の岩盤が東北東と西南西の方向にずれた「横ずれ断層型」である。断層が通過する南九州自動車道の八代インター近くでは、橋脚部分が大きく上下にずれた。


周辺の畑では300メートル以上にわたって地割れが発生し、50~60センチメートル段差で隆起し、「地震断層」が地上に出現した。さらに国土地理院は衛星測位システム(GNSS)を使って地殻変動を解析し、震源に近い八代市で地盤が北東に約84センチメートルずれ、約30センチメートル沈降したことを観測した。

 

政府の地震調査委員会は、日本各地の活断層について地震が起きる可能性をランク付けして公表している。地震発生の確率が極めて高い「Sランク」の活断層は全国に36あり、「今後30年以内にM7クラスの地震の発生確率が3%以上」とされる。日奈久断層帯は「Sランク」に分類されており、陸側の「日奈久区間」でM7.5程度、海にかかる「八代海区間」でM7.3程度の地震が想定され、全体が活動すると内陸地震としてはきわめて大きいM8.0になる。

 

今回は日奈久断層帯の南西端まで破壊が進行しなかったが、ここに割れ残りがある。一部の断層は海底下にあり、もし海域で大地震が発生した場合には海底面の変動が生じて津波が発生する恐れがあるので、今後も厳重な注意が必要である。よって被災地の方々には、今後も直下型地震がまだ続く恐れがあること、また海域へ震源域が拡大する可能性があることを念頭に置き、安全を確保しつつ復旧活動に当たっていただきたい。

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