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【先行配信】「熊本地震」と「南海トラフ地震」はどう関連するか

津波からどう逃げるか

南海トラフ巨大地震で想定されているM9.1は、今回の熊本地震M7.1より約1000倍も大きい。国の想定では南海トラフ巨大地震で想定される死者のうち7割から8割が津波によるものと試算されている。

 

大津波に遭遇したときにどのように行動するかは、命を守るうえで欠かせない基本知識である。特に沿岸部では、地震の揺れそのものよりも、その後に到達する津波のほうがはるかに大きな被害をもたらす。そのため、大きな揺れを感じた瞬間に「津波が来る」と判断し、直ちに避難を始めることが重要である。

 

ここで役立つ目安が「揺れの長さ」である。強い揺れが1分間続いた場合はM8クラス、さらに3分間以上続く場合はM9クラスの巨大地震の可能性がある。

 

揺れの長さが重要なのは、地震の仕組みに理由がある。地震は地下の「断層」が急激にずれることで起きるが、そのずれが広範囲に及ぶほど地震は大きくなる。そして、断層のずれが続く時間が長いほど、地上で感じる揺れも長く続くのだ。

 

たとえばM7クラスでは、断層のずれは数十キロメートル程度で、揺れの時間も十数秒から長くても30秒ほどである。一方、M8クラスでは断層は100キロメートル以上にわたり、揺れは約1分続く。

 

さらにM9クラスになると、断層は数百キロメートルに及び、揺れは2分から3分、場合によってはそれ以上続く。実際に東日本大震災(M9.0)では、福島県いわき市などで震度4以上の揺れが190秒(3分強)も続いた。したがって、揺れの強さだけでなく「どれくらい長く揺れているか」に注目することで、危険を素早く察知し避難につなげることができる。

 

海岸や河口付近にいる場合は、判断を迷っている時間はない。強い揺れが長く続いた場合は、津波警報を待たずに、直ちに高台へ避難する。近くに高台がない場合は、津波避難ビルなどの頑丈な建物の上層階へ避難していただきたい。

 

また避難は徒歩が基本である。車での移動は渋滞を引き起こし、かえって危険になる場合があるからだ。また、津波は一度で終わるとは限らず、何度も繰り返し押し寄せる。よって警報が解除されるまで、決して戻ってはならない。

 

日ごろからの備えも重要である。自宅や職場、旅行先などで「どこに逃げるか」「どの経路で避難するか」をあらかじめ確認しておく。また夜間や悪天候でも安全に避難できるように、懐中電灯や非常用の持ち出し品を準備しておくことも大切だ。

 

そもそも地震はいつ起きるかを予知することが極めて難しい現象である。2030年代(2035年±5年)に発生が予測される南海トラフ巨大地震も、日時を特定して予知することはできない(拙著『大人のための地学の教室』ダイヤモンド社を参照)。一方、プレート・テクトニクスが絶え間なく続いていることを考えると、決してパスはない(回避はできない)のである。

 

だからこそ1分以上続く強い揺れを感じたときには「巨大地震かもしれない」と判断し、ためらわずに避難を始めることが重要なのだ。最終的に命を守るのは一人ひとりの行動である。「1分以上揺れたらすぐ逃げる」「より高く、より遠くへ逃げる」という原則を徹底することが、命を守る最もっとも確実な方法である。

 

「知識は力なり」とは英国の哲学者フランシス・ベーコンの言葉である。ぜひ地球科学の知識を活用して、直下型地震と南海トラフ巨大地震に対して十分な備えをしていただきたい。

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10月号ではその他にも、
「『いつの間にか備わっている』フェーズフリーという発想 佐藤唯行
「ペット防災の本質は『平時の過ごし方』にある」 冨士岡 剛
「能登半島地震の教訓と『防災庁』創設の意義」 中川宏昌
「ルポ 熊本地震ーー再びの災禍に見舞われた現場へ」 粟野仁雄
などが収録予定です!お楽しみに!
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