「南海トラフ巨大地震」との関連
2つの熊本地震は、2030年代に発生が予測される「南海トラフ巨大地震」との関連がある。西日本で過去に起きた地震を詳しく調べると、南海トラフを震源とする巨大地震発生の40年前からと発生後10年の期間に、直下型地震の発生数が多くなる(図3)。そして現在は1995年の阪神・淡路大震災から始まった「活動期」に当たり、これから同様の地震がさらに増えると予測される。

図3
近年では2005年の福岡県西方沖地震、13年の淡路島地震、16年の熊本地震、18年の大阪北部地震が起きたが、これらが増えてピークに達したとき、最後の打ち止めとしてM9.1の南海トラフ巨大地震が起きると予想される。よって、今後も西日本ではM7クラスの直下型地震の活動に十分な警戒を続けていただきたい。 ここで南海トラフ巨大地震のメカニズムについても解説しておこう。まず「トラフ」とは、海底に舟底のような平たい凹地形ができる場所を言う。南海トラフは太平洋の静岡県沖から宮崎県沖まで続く水深4000メートルの海底にある。ここは歴史的に巨大地震が繰り返し起きた場所でもある(図4)。

図4
この成因には、日本列島を囲むプレートという厚い岩板の動きが関わっている。地球科学の基本理論「プレート・テクトニクス」による描像である。日本列島には南方から来た「フィリピン海プレート」が沈み込んでいる。このとき地下で歪みが蓄積され、定期的に巨大地震が起きる。これと同時に巨大な津波が発生し沿岸を襲う。
南海トラフのすぐ北側には3つの「地震の巣」があり「震源域」と呼ばれている。それぞれ東海地震・東南海地震・南海地震を起こした場所で、一部は陸地にも差し掛かる。古文書を解読して地震が起きた歴史を繙とくと、南海トラフ沿いで地震と津波が約100年おきに発生したことがわかってきた。
そして3回に1回は東海・東南海・南海の3つの震源域が同時に活動する「連動型地震」だった。そして次回はこうした連動型地震が起きる番に当たり、首都圏から九州まで広域で甚大な被害が予想されている。
ちなみに、3つの震源域は地震が起きる順番が決まっており、最初に名古屋沖で東南海地震が発生し、次が静岡沖の東海地震、最後に四国沖で南海地震が起きる。一方、これら3つが起きる際には時間のズレがある。前回は東南海地震 (1944年)が起きた2年後に、南海地震(1946年)が発生した。その前の回(1854年)は、同じ場所が32時間の時間差で活動した。また3回前(1707年)には、3つの震源域が数十秒のうちに活動した(拙著『日本史を地学から読みなおす』講談社現代新書を参照)。
政府の中央防災会議は南海トラフ巨大地震の被害について以下の予測をしている。巨大地震によって九州から関東まで広い範囲に震度6弱以上の大揺れをもたらし、震度7を被こうむる地域が10県にわたる。
その結果、犠牲者の総数30万人、全壊する建物235万棟で、海岸を襲う津波の最大高が34メートルに達する。南海トラフは西日本の海岸に近いので、津波は一番早いところでは2~3分後に襲ってくる。また浸水する面積は1000平方キロメートルに及ぶ。
経済被害は290兆円を超えると試算され、政府の1年間の租税収入の3倍を超える額になる。東日本大震災の被害総額は約20兆円なので、その15倍相当の災害となる。また、犠牲者の予測数は東日本大震災の2万人(行方不明者を含む)の15倍である。
さらに日本全体での被災者の総数は6800万人と予測され、総人口の半数を超える。被災地域がわが国の産業経済の中心であることを考えると、南海トラフ巨大地震が太平洋ベルト地帯を直撃することは確実である。すなわち、「西日本大震災」と呼ぶにふさわしい激甚災害が必ず起きると言っても過言ではない。