熊本地震の特異な原因
2回の熊本地震を引き起こした断層活動の背景には、「大分―熊本構造線」と呼ばれる特異な地質構造がある(図2)。熊本市と大分市を結ぶ線上に横ずれ型の活断層が密集するゾーンだ。その西端にある日奈久断層帯は、さらに八代海の活断層群へ連続している。 大分―熊本構造線上では、直下型地震だけでなく活火山の噴火も引き起こした。平成28年熊本地震の2日後には、阿蘇山・中岳で小規模な噴火があり、火口から100メートル噴煙が上がった。

図2
その6カ月後には1980年以来36年ぶりとなる爆発的噴火が発生し、噴煙が高度1万1000メートルに達した。さらに5年後の2021年には大きな噴石が南方向へ900メートル飛散し、火口から北方向へ火砕流が1600メートル流下した。 大分―熊本構造線は、今から600万年ほど前から地震と噴火を繰り返してきた特異な地域で、「豊肥火山地域」と呼ばれている(図2)。「豊後」(大分県)と「肥後」(熊本県)に因ちなむ名称だが、マグマの熱によって温められた地下水が断層を通路として地表に湧き出る温泉地帯として有名な地域である。 豊肥火山地域の特徴は、長期間にわたって地震と噴火がペアで起きることで、平成28年熊本地震・阿蘇山噴火・令和8年熊本地震はその現れである(拙著『日本の地下で何が起きているのか』岩波科学ライブラリーを参照)。ちなみにこの地域は筆者が40年前に東京大学へ提出した博士論文で研究した地域だが、よもやその活動が目の前で起きるとは全まったくの想定外だった。 大分―熊本構造線上の直下型地震がいつ収束するかは、現代の地球科学では残念ながら予測できない。一方、「過去は未来を解く鍵」の考えに従うと、過去600万年にわたって続いた活動が、小休止の後に再開したことは確実で、今後は地震活動だけでなく豊肥火山地域内部にある阿蘇山・九重山・鶴見岳などの活火山にも警戒が必要と考えられる。