• 社会

精神疾患の親を持つ子どもたちの見えない悩み。"子ども"でいられなかった人々を支援する青年の挑戦。

子どもでいられる期間が短かった


父親の癇癪に怯えた一方、母親の過干渉もまた、平井さんの頭を悩ませた。


「母は善意でお父さんから子どもを守ろうとして、それが父の怒りの導火線に火をつけてしまうタイプ。正直、『余計なことをしないでくれ』と当時は思っていました。すると母は『あなたのことを思って行動しているのに』と泣き崩れることもありました」


また平井さんは小学生時代から、母の愚痴の聞き役を担った。


「こうした家庭にありがちですが、親が子どもに対して家族の愚痴を吐き、子どもが聞き役を担うことがあります。子どもでいられる期間があまりなく、私は自分の感情の持って行き場がよくわからない時期がありました」


年の離れた姉は早々に家から出てしまい、家庭で生活する子どもが平井さんだけの期間が長かった。高校卒業に際して、迷いもあったものの、関西にある大学に進学することで親との同居を解消した。


「支援をする側になってみても、さまざまな子が直面している問題ではあるのですが、当時の私にも『自分が家を離れたら、誰が親の面倒をみるのだろう』という葛藤はありました。精神疾患のある親から何らかの影響を受けた子どもにとって、18歳から22歳のライフイベントである『進学』や『就職』のタイミングで、家族と適切な物理的な距離をとり、そのあとに自身のトラウマと付き合っていくプロセスがあると私は現在考えています」

気軽に相談できるオンライン形式


「CoCoTELI」では、情報発信のほか、精神疾患の親を持つ子どもたちの相談支援や居場所づくりをオンラインで行っている。オンラインによって行う理由は、「デバイスさえあれば、地理的な制約を受けないから」と平井さんは話す。


現在の利用者は、10歳から25歳くらいまでの100名ほど。月に4回程度オンラインでイベントを行うほか、個別に相談などにも応じる。オンラインをフルに活用することの利点は大きいと平井さんは話す。


「家族の問題は、常に起きているわけではないというのがポイントです。相談したいと思ったときに、ある種手軽に相談できることが必要ではないかと私は考えています。また、地域で行う対面形式の相談をしようとすると、どうしても精神疾患に対する偏見が強いなかで『相談に行く間に誰かに会ったらどうしよう』『悩みを打ち明けたあとのリアクションが怖い』という心配がつきません」


だが同時に、平井さんは「最終的に地域の窓口につながることも重要」と指摘する。


「私は、オンラインでの相談と地域の対面支援の両方が機能していくことが大切ではないかと考えています。ただ、今申し上げた理由で、特にコロナ禍以降、オンラインでの相談が気持ちが楽だという人は多いわけです。しっかりとオンラインでの支援が確立し、肯定的な体験を経たのちに、地域の社会資源等の"頼れる先"を増やしていくことが理想だと思っています」

  • 利用者たちの居場所をオンラインでつくる

    利用者たちの居場所をオンラインでつくる

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