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「トランプ」を生んだ建国の歴史とプロテスタントの精神

国家と宗教の関係はどうあるべきか

ちなみにトランプ大統領は長老派(プロテスタントの一派)だとよく言われます。たしかに彼が若い時にいたのは長老派教会ですが、ご本人に宗教心はなく、聖書もあまり熱心に読んだことがないでしょう。彼はキリスト教ナショナリズムの人たちの歓心を買うような言動をとることで、彼らの支持を集めているだけだと思います。


キリスト教ナショナリズムには、黒人やラテン系の賛同者も多くいます。彼らは伝統的な家族を重視する保守的な信仰を持っており、アメリカを神の国として取り戻す物語に同化することで、アメリカ人としての帰属意識を高めたいとの思いがある。さらに、出身国である中南米の左派系独裁政権による混乱と腐敗に強い嫌悪感を抱いている人もいます。そのような人たちも、トランプ大統領を熱烈に支持しています。


ただ私はこうした国家とキリスト教を直接結びつける動きは、かえってアメリカのキリスト教を衰退させると考えています。現代のヨーロッパの国々では、キリスト教は完全に形骸化しています。それは教会が国教会だったからです。教会は国の税金で賄われるため、教会に信徒が集まろうと集まるまいと関係ない。そのため積極的に信者を増やす努力をせず、ヨーロッパのキリスト教は衰退していきました。


他方アメリカは、憲法上は政教分離を原則とする世俗国家です。アメリカではキリスト教がマジョリティなだけに、信教の自由の観点からマイノリティの宗教に配慮し、キリスト教は国家そのものとは一定の距離を置いてきたのです。


国という後ろ盾がないアメリカの教会は、人が集まらないと潰れてしまいます。そのため教会の牧師は熱心です。人々の家を巡回し、面白い話をし、信者が喜ぶイベントを行ってきました。その結果、アメリカのキリスト教はある種ビジネス化した面があります。


しかしだからこそ、アメリカのキリスト教は今も市民のなかに息づき、活気があるのです。それを国教化してしまえば、アメリカのキリスト教もヨーロッパと同じように衰退していくでしょう。

世界で台頭するポピュリズムは「代替宗教」

最後に今、世界で台頭しているポピュリズムについて触れておきます。ポピュリズムの背景には反知性主義や反権威主義もありますが、20世紀後半にリベラルな世界秩序、平等意識と人権意識が浸透し、成功したからこそ生まれた現象だと私は考えています。


平等意識が高まった結果、これまで発言力がなかった人も、自分たちが積極的に発言していいんだとの感覚が生じました。権利意識だけでなく、SNSのような実用ツールも生まれ、誰でも自分の意見を発信できるようになりました。これは世界共通の現象です。


ただ、こうした現象を単に「政治を知らない愚かな民衆が、無責任に発言しているだけ」といった図式でとらえることは間違いだと思います。私はポピュリズムを支える人々の情熱のなかに、「代替宗教」を垣間見ます。ポピュリズムに傾倒する人たちは、何ごとも善悪の二元論で考えがちです。これはいわば宗教論議なのです。


政治の世界は本来、妥協の世界ですが、宗教論議である以上彼らは絶対に妥協しません。自分たちが正義で、悪は排除するしかないという考えになってしまうのです。


本来なら宗教こそこうした疎外された社会的弱者が希望を託す受け皿となるべきですが、残念ながら今の組織宗教にその力がない。そのため行き場を失った情熱が、ポピュリズムに表現されているのではないかと私は感じています。


アメリカの反知性主義と同じように、ポピュリズムには負の側面だけでなく、権力の固定化を防ぐ作用もあります。ただそのためには、力のない人の声なき声を掬いあげ、集約して政治に届ける必要があります。


アメリカ建国から250年が経とうとする今、もう一度人間にとって大事な価値観は何かという原点に立ち返り、新しい社会をつくるために、政治や宗教について真摯に考えるべきだと思っています。


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