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「核廃絶」に向けての 10 問 10 答 ――青年世代の使命と責任

Q5.なぜ核兵器の保持に固執している国があるのですか?

高橋 「P5」と呼ばれる国連安全保障理事会の常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)は、自国が直接攻撃される事態を避けつつ、同盟を形成し、覇権を握ろうとしてきました。これらの国は核不拡散条約(NPT)で核軍縮を約束しているにもかかわらず、軍拡しています。


北朝鮮や南アフリカ(後に自ら廃棄)も核兵器開発に成功しています。大国との交渉のカードとしてちらつかせる国もあります。


一方、紛争の予防には外交や国際法、経済・社会的な相互依存、サプライチェーンの国際化などが貢献しています。社会インフラを含む都市全体を破壊する核兵器になぜそこまで固執するのか疑問です。

Q6.「核廃絶は理想論だ。中国や北朝鮮による脅威が増す中、日本も核兵器をもって武装するべきだ」という過激な意見もあります。日本も核兵器で武装すべきしょうか?

高橋 フォークランド紛争の例のとおり、仮に日本が核兵器をもっていたとしても、武力侵攻される可能性がゼロにはなりません。


さらに長崎大学などによる北東アジアでの核使用シミュレーションでは「仮に中国とアメリカの間で戦争が起きた場合、実際に核兵器を使う意思があることを示すために、(米中の全面的な核戦争を避けて)核の傘の下にいる日本等で小型の核兵器が使われる可能性がある」と推定しています。


ウクライナ情勢については、ロシアが核を使うことなく、英米仏も核による威嚇やその使用に至ることなく、戦争を終結させる決意も必要です。


「安全保障環境が悪化しているから、軍縮できない」という声を聞きます。しかし核兵器の数や威力、使える状況を制限していく「核軍縮」は、(偶発的な)衝突を防ぎ、地域の緊張関係を緩めます。その交渉や、各国の実施状況を検証する過程で生まれる「信頼」も、核兵器廃絶の基盤です。すぐに核の傘から脱却する政治判断が難しい場合、短期的には核抑止を継続しつつも、核兵器の数を減らし、国際法と検証によって核兵器を使うハードルを上げる。核兵器の存在価値を下げ、核抑止から脱却し、そして、完全に廃絶することが現実的な選択です。軍縮は安全保障に資するのです。

Q7.2017年7月に核兵器禁止条約が採択されましたが、日本は批准していません。核兵器禁止条約にはどのような重要性や課題がありますか?

高橋 冷戦時代の87年、当時のゴルバチョフ書記長とレーガン大統領は「これ以上核兵器を増やせば安全保障はジレンマに陥り、米ソともに不安定になるばかりだ」という共通理解を見出し、中距離核戦力の全廃を進めました。今は各国の対立が大きく、指導者の軍縮の意志も弱くなり、共通価値が生まれにくいと感じます。


そこでICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)やSGI(創価学会インタナショナル)など市民社会や有志国が中心になって、核兵器の非人道性や、日本を含む「グローバル・ヒバクシャ」(世界の核被害者)の被害に着目し、核兵器禁止条約ができました。現在97カ国が署名または締約国となり、核使用の被害を明らかにすることで、核兵器の正当性を否定しようとしています。


世界では核実験が約2050回以上も繰り返されてきました。実験場となった地域では環境汚染が甚大で、現在でも帰還困難区域に指定されている場所もあります。核兵器禁止条約では被害コミュニティを支援すると定めています。核被害の実態を明らかにすることは、核兵器を廃絶する根拠となる事実を積み重ねることになります。


これまでの軍縮条約は「核を使う側の視点」を重視してきましたが、核兵器禁止条約は「核兵器を使われた側の視点」に立って作られています。


日本がこの条約に参加して、核兵器の非人道性や無差別性を国際社会に訴えることは、プーチン大統領をはじめ、核を持つ指導者に対する「使用は許されない」とのメッセージを強化することになります。


核兵器廃絶日本NGO連絡会では、政府との対話や政党討論会を開催しています。そうしたはたらきかけによって、全政党が(少なくとも)「オブザーバーで参加すべき」という立場をとるようになりました。


加えて、核兵器禁止条約には核兵器を廃棄したことを検証する制度を作ることなどが定められています。日本がその議論に加われば、北朝鮮の核開発をチェックする能力の向上や抑制する動きにつながりうると指摘する専門家もいます。条約への参加は、日本の安全保障にも有益なのです。

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